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コミュニケーション障害における参加

「音楽がもたらすコミュニケーション障害がある者の社会的および参加のアウトカム:系統的レビュー」

原題:  Music Improves Social and Participation Outcomes
     for Individuals With Communication Disorders: A Systematic Review
著者:  Boster, J., Spitzley, A. ほか
発表:  2021年
掲載誌: Journal of Music Therapy
掲載号: Volume 58, Issue
DOI:  10.1093/jmt/thaa015

音楽療法士は、言語聴覚士や作業療法士、理学療法士と協同でリハビリに参加することがあります。
なかでも言語聴覚士と協同して、コミュニケーション障害を持つ方に関わることが多いのではないでしょうか。
アメリカでも、言語聴覚士にあたるSLPと音楽療法士の協同は多く行われているようです。

コミュニケーション障害があるお子さんや大人を対象とした言語聴覚療法が最終的に目指すところは、他者と効果的なコミュニケーションがとれることですが、
そうした目標のもと、音楽をはじめとする芸術療法(arts-based intervention)が行われてきたそうです。

本レビューでは、対象をコミュニケーション障害と音楽療法に絞って、生活の質を向上する社会的やりとりや参加を目標として、どのように音楽が使われているのか、どのようなアウトカムが報告されているのかを調べました。

「相互的やりとり」や「集団参加」などは、音楽療法に頻繁に求められる目標ですが、何を持って改善とするのかなど、全般的に捉えにくく療法士の主観が入り込みやすいように思います。

ICFとは?
社会的アウトカムとは?
参加のアウトカムとは?
コミュニケーション障害の特徴に沿って選ばれる目標とは?

など、「参加」について様々な視点を与えてくれます。
レビューを起点とし、レビュー対象となった文献にもあたってみたいと思います。

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EBPの意思決定プロセス

「幼児を対象とした音楽療法における根拠に基づいた臨床:意思決定プロセス」

原題: Evidence-Based Practice in Early Childhood Music Therapy:
    A Decision-Making Process
著者: Petra Kern
発表: 2010年
掲載誌:Music Therapy Perspectives
掲載号:Volume 28, Issue 2
DOI : https://doi.org/10.1093/mtp/29.1.91

Evidence-Based Practice (以下EBP)という言葉は、音楽療法分野でも聞かれるようになりました。

この文献は音楽療法におけるEBPの理論背景やEBPの具体的な手順を教えてくれています。
また、音楽療法の研究者・臨床家・学生・そしてクライアントやそのご家族が手を取り合って、EBPを推し進めていくことの重要性を説いています。

音楽療法におけるEBPについて様々な意見があるのは承知していますが、音楽療法でのEBPについて知る上で貴重な文献です。

EBPを日々の臨床で行ううえでの意思決定プロセスを

ステップ 1 ー 臨床上の疑問を明確にする
ステップ 2 ー 最適な根拠を探す
ステップ 3 ー 根拠の質や関連性を吟味する
ステップ 4 ー 研究を価値観や経験と統合する
ステップ 5 ー 意思決定プロセスや臨床の効果を評価する

として、ASDを持つお子さんのケースを例に説明しています。

ステップ3の詳説部分から例文をかりて、「エビデンス」といわれるものの受け取り方について考えてみます。

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ASDを持つお子さんの社会的スキル

「ASD児における社会的アウトカム:音楽療法からのアウトカムのレビュー」

原題: Social outcomes in children with autism spectrum disorder:
    a review of music therapy outcomes
著者: A Blythe LaGasse
発表: 2017年
掲載誌:Patient Related Outcome Measures
掲載号:Volume 8
DOI : https://doi.org/10.1159/000515136

ASDがあるお子さんのための音楽療法では、社会的スキルの向上を目標とすることが多くあります。

この文献は
・ASD児の社会的側面の向上を目的とした音楽療法
・アセスメントにおける音楽療法に特有な配慮
・音楽を用いたアセスメントの具体例
などを概説しています。

音楽療法初学者にとっても、多職種に音楽療法について説明する際にも、参照したい文献です。
無料で全文を読むことができます。

文献の終盤に、ASDを持つお子さんの共同注意を促す上で、音楽にしか実現できない有効な介入について説得力のある記載があり、とても印象的でした。
そのまとめ文を読んでみましょう。

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