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音楽療法の国際的職能団体

音楽療法には世界連盟(World Federation of Music Therapy; WFMT)という国際的な組織があります。

その学術大会として、3年ごとに世界大会(Word Congress of Music Therapy; WCMT)が開かれます。

アジアでは2011年に初めて韓国🇰🇷で開催、
2017年にはなんと日本🇯🇵の茨城県つくば市で15回目のWCMTが開催されました。
WFMTのトップページの写真はつくば国際会議場で撮影されたものです。

16回大会は、2020年に南アフリカ🇿🇦で開催予定のなか残念ながらオンラインで開催となりましたが、

今年、カナダ🇨🇦のバンクーバーにて17回大会が対面開催となりました🙌

本大会では、光栄にも発表する機会を得たため、私も現地参加させていただきました。

世界のいろんな地域の音楽療法士さんと知り合うことができ、
テーマや発表形態もさまざまに各国の音楽療法士が意見交換している様子を見て、
なによりも、自分が音楽療法を学びはじめた頃から知っている先生や友だちにも再開することもでき、初心を思い出して音楽療法への情熱を痛いほど再認識する機会となりました。

こじつけ感が否めませんが、そもそもWFMTとはどういう組織なのか、WFMTのトップページにある ”What is WFMT?” から英文を借りて読み解いてみましょう。

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adventure backlit dawn dusk

コミュニケーション障害における参加

「音楽がもたらすコミュニケーション障害がある者の社会的および参加のアウトカム:系統的レビュー」

原題:  Music Improves Social and Participation Outcomes
     for Individuals With Communication Disorders: A Systematic Review
著者:  Boster, J., Spitzley, A. ほか
発表:  2021年
掲載誌: Journal of Music Therapy
掲載号: Volume 58, Issue
DOI:  10.1093/jmt/thaa015

音楽療法士は、言語聴覚士や作業療法士、理学療法士と協同でリハビリに参加することがあります。
なかでも言語聴覚士と協同して、コミュニケーション障害を持つ方に関わることが多いのではないでしょうか。
アメリカでも、言語聴覚士にあたるSLPと音楽療法士の協同は多く行われているようです。

コミュニケーション障害があるお子さんや大人を対象とした言語聴覚療法が最終的に目指すところは、他者と効果的なコミュニケーションがとれることですが、
そうした目標のもと、音楽をはじめとする芸術療法(arts-based intervention)が行われてきたそうです。

本レビューでは、対象をコミュニケーション障害と音楽療法に絞って、生活の質を向上する社会的やりとりや参加を目標として、どのように音楽が使われているのか、どのようなアウトカムが報告されているのかを調べました。

「相互的やりとり」や「集団参加」などは、音楽療法に頻繁に求められる目標ですが、何を持って改善とするのかなど、全般的に捉えにくく療法士の主観が入り込みやすいように思います。

ICFとは?
社会的アウトカムとは?
参加のアウトカムとは?
コミュニケーション障害の特徴に沿って選ばれる目標とは?

など、「参加」について様々な視点を与えてくれます。
レビューを起点とし、レビュー対象となった文献にもあたってみたいと思います。

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trees near ocean

安心してお話できるまで音楽ができること

「幼児の場面緘黙の治療における音楽療法の理論的枠組:複数事例研究から」

原題:  A theoretical framework for the use of music therapy
     in the treatment of selective mutism in young children:
     Multiple case study research
著者:  Kate Jones & Helen Odell-Miller
発表:  2022年
掲載誌: Nordic Journal of Music Therapy
掲載号: Volume 31, Issue 5
DOI :  https://doi.org/10.1017/S0265051721000310

場面緘黙があるお子さんと関わらせもらうと、話すという行為に伴う自分の心の動きに気付かされます。

ふだん何気なく話してるけど、相手との関係性や物理的距離感にもよって、たしかに自分が話すときの心理が大きく揺れ動いています。

それでも必要に応じて話しはしますが、この些細に思える不安感がもしもっと大きかったら、取り込まれてしまいそうなくらい大きかったら…と想像します。

発話という行為に不安が伴うのであれば、発話につながりやすい、でも話さなくてもいい音楽の出番だと思うのですが、音楽療法分野で緘黙に関する文献は数少ないです。

この文献は複数の事例から、場面緘黙があるお子さんの音楽療法について理論的枠組を構築することを試みた文献です。無料で全文閲覧できます。

お子さんそれぞれの経過や、これら事例研究から浮かび上がった共通するテーマが詳説されています。

またそこから組み立てられた理論的枠組みには、治療段階ごとの目的や目的に合わせた音楽活動の種類、言語聴覚士との協同や保護者や園との連携についてなど、幅広く述べられています。

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