ことばの神経科学

2017年(35巻)Music Therapy Perspectivesの第2号では、「音楽・発話・言語への脳科学の視点」と第して特集が組まれていました。本文献はその一部です。

脳機能画像技術の発展や神経生物学的基盤の理解が進み、聞く・話すときに脳で何が起こっているか、そしてその障害の背景がわかり始めています。

そうした知見をまとめ聴覚処理、言語処理、発話産生について神経学的な解説をしたあと、
後半には、言語障害に対する音楽療法への示唆を与えてくれる文献です。

” this information” は、この前で述べられている大脳基底核の働きについての情報を指しています。

Take が Taking と、現在分詞形になっています。
主語はなく、文がいきなり Taking this information … と始まっていますね。

これは、 分詞構文 と言われるものです。

分詞構文は、
「主語が同じ2つの文が」 「接続詞でつながれている」とき、
主語と接続詞を省き・動詞を分詞形で表すことで、1つにまとめてしまうものです。

具体的に見てみましょう。

元の文❶ If the music therapist takes this information together with knowledge of how music affects the brain,
元の文❷ the music therapist may then consider the best way to incorporate rhythm, vocal range, and music preference into interventions for dysarthria.

もともとはこのように分かれていたとして、

元の文❶から、
接続詞if と 主語the music therapist を省き、動詞take を分詞型にすると
If the music therapist takesing this information together with knowledge of how music affects the brain,

👇
分詞構文 になります

Taking this information together with knowledge of how music affects the brain,
the music therapist
may then consider the best way to incorporate rhythm, vocal range, and music preference into interventions for dysarthria.

元の文❷は主語と述語動詞がある文のままなので、the music therapist が主語として残ります

また、分詞構文になった元の文❶では、主語は the music therapist で、その述語動詞は takes でした。

いわゆる「能動態」で、the music therapist が takes の動作主体であることから、
分詞構文にするときには、take の「現在」分詞型である taking になりました。

分詞構文の訳し方はいくつか種類がありますが、省略された内容や文脈に応じてその都度考えたり、ひとまず「〜して」と訳すのが無難だったりします。

分詞構文の訳はひとまず
「how music affects the brain の(of) knowledge を this information と Take together して
としておきましょう。

how music affects the brain は、 間接疑問文 と言われるものです。

もともとは、How does music affect the brain?という普段の疑問文を
文のなかに組み入れたいとき、語順が少し変わります

先の分詞構文になる前の元の文❶を例とすると、
If the music therapist takes this information together with knowledge of how music affects the brain,
のように、疑問詞 + 主語 + 述語動詞 と通常の文の前に元の疑問詞を置くような語順になります。

よって、分詞構文のなかに組み込まれた間接疑問文に焦点をあてると、
主語は music の述語動詞が affects であるとわかります。

訳すときは、
「音楽がどのように脳に影響するのか?」という疑問文を、文のなかに入れて
「音楽がどのように脳に影響するのか という(of)knowledge を this information と…」と続ければよいだけです。

最初の文の前半だけで、盛りだくさんでした。
こちらの文全体の構造は、次のセクションで整理します。

文の前半は分詞構文であることが分かりました。
後半の文から主語と述語動詞を見つけましょう。

述語動詞になりそうなものは2つありますが、
incorporate は to を伴っているので 不定詞 であることがわかるかと思います。

the best way を to incorporate rhythm, … で詳しくする 形容詞的用法 です。

よって、

文の主語は the music therapist
述語動詞は may (then) consider

となります。

前半は間接疑問文を含む分詞構文であることと併せて、文の構造を整理しましょう。

今回の述語動詞は may then consider と、consider に意味を付け加える”おまけ”がありますね。

may は、動詞の意味を助ける 助動詞 で、控えめに推測や可能性を論じます。

また、then は、
直訳すると「次に」「それから」など時間の経過や順序を表しますが、
今回は、「(分詞構文の内容)したら自然に consider することになるだろう」のようなニュアンスに留めていいかと思います。

やっと2つ目の文です。

For example, は中学校の英語で習った記憶がある方もいるかもしれません。
具体的な例えを述べるとき、特に、例が文のように長いときに用いられます。

1つ目の文は、「音楽が脳にどのように影響するか念頭に置き、ディサースリアのリハビリに音楽的要素を取り入れる方法を考て」といった内容でした。

それを受けて、こちらの2つ目の文では、「例えば、運動低下性ディサースリアでは …」とディサースリアの1つのタイプを例にして、運動低下性ディサースリアの様態を踏まえた音楽的要素の取り入れ方を紹介しています。

なお、such as も具体例や代表例を述べるときに使われますが、こちらは名詞だけなど短いものを羅列します。

such as についてはこちらの記事もご参考になさってください👇

では、具体例を述べている文の主語と述語動詞を見つけましょう。

まず、hypokinetic dysarthria「運動低下性ディサースリア」は、
For example, for hypokinetic dysarthria, と前置詞がついているので、
「例えば、運動低下性ディサースリアのためには」という意味合いになり、
この文の主語ではありません

一般動詞の consider と、元は一般動詞showである (has been)shown のいずれかが述語動詞で、
その前にあるものが主語になりそうですが、

consider の前には、助動詞 may があり、主語らしいものは a music therapist があります。

has been shown の前には、こちらも主語になりそうな this がありますが、
もうひとつ前を見ると 接続詞 as があります。

as は辞書的にはたくさん意味がありますが、文献を読んだりする上での第一歩としては、接続詞 because と似たものと理解してもらって差し支えないかと思います。

つまり、as に続くthis has been shown… はこの文のメインの文ではありません。

この文のメインの文は a music therapist から始まる部分で、

a music therapist が主語
may consider が述語動詞

になります。

as の意味
as は
「〜として」という意味の前置詞 になるほか、 接続詞にもなります
接続詞の as は「何かに置き換えられる」と知っておくと訳しやすくなります
まず思い浮かべたいのは because「〜だから」。ほかにもwhen「〜のとき」、さらに like「〜のように」に近い意味を表すこともあります
また、as には「〜につれて」という特有の意味もあります
さらに比較表現(”as carefully as possible”)にも as が用いられますね
さまざまな文に触れ、多くの as を「経験」するとそれとなく意味が取れるようになっていきます

consider の後ろには、use の現在分詞形である usingが、
as が導く部分には、has been shown と to increase など一般動詞が見受けられますが、
これらは述語動詞ではありません。

一つずつ読み解きましょう。

まず、述語動詞 may consider に続く、using はなんでしょうか?

prefer も「好む」といった意味の一般動詞であると知っていう方には、
may consider using preferred music
は、さらに難解になりますね💦

これら3つの一般動詞を整理すると

may consider
👆
using
👆
preferred
👆
music
_
述語動詞

consider の内容(目的語)を
use を”やりくり”して表すために
動名詞になっている
music を詳しくする
「好まれる」という受動の
意味
なので過去分詞形

つまり

a music therapist
主語
may consider
述語動詞
 using  ( preferred  )▶︎  music,
目的語

となります。

preferred music は音楽療法ではよく見られる語句で、クライアントの「好きな曲」です。
一般動詞が渋滞している上記部分だけを訳すと

「音楽療法士が 検討するだろう クライアントが好む曲を使うこと を」
つまり
「音楽療法士は クライアントが選んだ曲を用いることを 検討するだろう」
のような意味になります。

また、先述の as が導く部分は、余談として”挿入”されている部分です。
as this has been shown to increase dopamine production,
目印としては小すぎますが、,(カンマ)までが挿入部分です。

この文のメインの文ではないですが、as 挿入部のなかにも主語と述語動詞が見られます。
つまり、

this は as 挿入部の主語
has been shown は挿入部の述語動詞

です。

this は直前にある、using preferred music のことを指しています。

as挿入部のなかの
has been shown to increase dopamine production も動詞が盛りだくさんですね💦

実は、production も一般動詞 produce の派生語です。
元は「生み出す」とか「生産する」といった意味です。
dopamine production で「ドパミン生成」などと訳せるでしょう。

まず、大枠では

this
主語
has been shown
述語動詞
  to increase dopamine production
不定詞

と分けられ、

さらに “動詞の渋滞” 部分を分解してみると

has
👆
been
👆
shown
👆
to increase
👆
thisが主語なので
現在完了のhaveが
3人称現在単数形

hasになった
受動態のbe動詞が
現在完了hasに続いて
過去分詞形

beenになった
show「示す」
受動態の意味を表すために
be動詞に続いて
過去分詞形
である
shown になった
不定詞



つまり、as挿入部の述語動詞にあたる has been shown で
現在完了・受動態・show「示す」の意味を合わせて理解・訳す必要があります。

なお、 be shown to 〜 はよく見られる表現です。

動詞が不定詞になっているときは、名詞的用法かな…形容詞?…副詞的用法?など考えますが、
be shown to 〜の”チャンク”(かたまり)で「〜と示され」
have(has) been shown to 〜 で「〜とすでに示されている」
と憶えてしまってよいでしょう。

「このことは すでに〜している 示されて 上昇させると ドパミン生成を」
に、as が導く挿入部分である意味合いも含めて訳すと

「このことは ドパミン生成を 上昇させると 示され ている ので
となります。

最後に、as 〜 , に続く部分が何なのかも考えないといけません。
and があるので、the incorporation of a large vocal range は、何かとつながっているのでしょう。

the incorporation of a large vocal range は「広い声域を取り入れること」という意味です。
(先のproductionと同様、incorporation も一般動詞incorporate の派生語です🙌)

as 〜, 挿入されていることで気づくことが難しいですが、
the incorporationusing preferred music and で結ばれ
2つとも may consider の内容(目的語)です。

なかなか盛りだくさんでしたが、as に惑わされず、時間をかけて一般動詞の働きをひとつずつ整理していくと、文の構造を把握できるかと思います。

文の構造を改めて整理しておきましょう。

be shown to ~
be shown to ~ や has been shown to ~ はよく見られる表現で、不定詞部分の動詞によってさまざまな意味を取ります
has been shown to improve 「改善すると示されている」
〃 to reduce「減少させると」
〃 to enhance 「高めると」

〃 to affect 「影響を与えると」

さて、最後の文です。
ただ、冒頭は、2つ目の文に少し似ているので、まず主語と述語動詞が見つけられるかと思います。

2つ目の文:a music therapist may consider using preferred music,
3つ目の文:The music therapist may also consider using a strong, steady beat,
とよく似ていますね。

思い切って、主語と述語動詞を確定してしまいましょう。

主語は The music therapist
述語動詞は may (also) consider

___a music therapist may _____consider using 〜
The music therapist may also consider using 〜 と細かい変化があります。

a music therapist と同じ音楽療法士を指すので、
a が The に変わり The music therapistに

2つ目の文で consider して、3つ目の文で「またさらに」considerするので
may also consider となっています。

すでに述語動詞は consider だと結論付けたので、cued や uses は置いておいて😁
先に、気になる表現を整理しておきましょう。

まず、may consider に続く部分ですが、
2つ目の文では using preferred music, as … とシンプルだったのに、
3つ目の文では using a strong, steady beat, such that speech production is externally cued, which uses …
と何やら不穏な雰囲気ですね😅

「好みの音楽を 用いること」のように、
「〜を 用いること」くらいシンプルであってほしいですね。

しかし、*using a strong は、strong の後に何かほしくなりますね。
では、*using a strong, steady でしょうか。ここの区切りもおかしいですね。
さらに読み進めてもらい、 using a strong, steady beat のまとまりが consider の内容です。

許せるけど、なんで using a strong AND steady beat じゃないの💢
とお思いの方は、こちらの解説も読んでいただけると幸いです。

using a strong, steady beat

using a strong and steady beat でも文法的には正しいのですが、
strong も steady も同じように beat を詳しくしているとき、
今回のように and ではなく ,(カンマ)でつなぐことがあります。

例えば、a loud, clear voice「大きくてはっきりとした声」
a slow, steady rhythm「ゆっくりで一定のリズム」
a strong, consistent effect「強く一貫した効果」

比較として、2つ目の文の最後にある、a large vocal range はどうでしょう?
これは *a large, vocal range とは書かれません。

この違いは、
a strong, steady beat は、strong と steady が同じ程度に beat を詳しくする
a ( strong = steady ) ▶︎ beat

一方、a large vocal range は、vocal「声の」range「幅」がセットで「声域」なので
large だけで vocal range を詳しくしています。

a large ▶︎ (vocal range)

この場合は、large と vocal を ,(カンマ)で並列にすることはしないようです。

ということで、may also consider using の対象となるものは
a strong, steady beat なので

The music therapist may also consider using a strong, steady beat, 👈ここ
such that speech production is externally cued, which uses a different pathway than the basal ganglia.
で文が一区切りするようです。

… a strong, steady beat, such that speech production is externally cued, which uses a different pathway than the basal ganglia.
と、後半でも ,(カンマ)が文解体のヒントになりそうですね。

2つ目の文では、 ,(カンマ)に続いて as以降の部分(節)が挿入されました
今回も、,(カンマ)で挟まれている部分を探すと
.. a strong, steady beat, such that speech production is externally cued,
の太字で部分で
as のときのように、挿入部内の主語・述語動詞も見つけられますね。

, such that
_
speech production
主語
is  externally cued
述語動詞

この内部の述語動詞は

is
👆
externally
👆
cued
👆
主語 speech production が
「cue される」という
受動の意味になるために
speech production に応じた
be動詞である is
is cued という受動態の表現
externally「外部から」という
cue を詳しくする副詞
割り込んでいる

cue「合図する」が
受動態の意味を表すために

is に続いて
過去分詞形
cued になった

よって、

speech production is externally cued 「speech production が 外部から cue される」
と訳されます。

まず so that は、例えば、

I turned on the metronome and held it near my patient’s ears.
「患者さんの耳の近くにメトロノームを近づけた」

She could hear the tempo during her rehabilitation.
「彼女がリハビリ中にテンポが聞き取れた」

という2つの文は を so that でつなげて

I turned on the metronome and held it near my patient’s ears so that she could hear the tempo during her rehabilitation.
「(患者さんが)リハビリ中にテンポが聞き取 れるように 患者さんの耳の近くに(私が)メトロノームを近づけた」

と1つの文にまとめることができます。

では、残りの such that とは何でしょうか。

あまりお目にかからないな〜という印象を私も持っていますが、
今回の文では、such that は so that に近いもの、と考えて問題ないかと思います。

such that は、この so that とは訳し方は違えど、親戚のような関係性です。

先の so that の例文をシンプルにして
[ A ] so that【B】. は「 【B】できるように/するために [ A ] 」と訳せます。

同じように such that をシンプルな例文でみると
[ A ] , such that 【B】. は「[ A ] して、その結果【B】」と訳せます。

つまり、
[ A ] so that 【B】. は「【B】のために [ A ]」ですが
[ A ], such that 【B】.は「 [ A ] の結果【B】」と、原因と結果が反対であることに注意が必要です。

such that の場合は、, such that と ,(カンマ)が置かれるのも、
so that は “1文としてのまとまり感” がある一方で、
such that は「A して、その結果 B」と流れがあるからだとも考えられます。

と、本文は訳すことができるでしょう。

厳密には、so that と such that は文法的に同じ働きではありませんが、論文を読解する上ではこのように捉えると理解しやすいかと思います。

あともう一つ❗️あともう一つで、この文を読み切ることができます🥺

using a strong, steady beat, such that speech production is externally cued, which uses a different pathway than the basal ganglia.

にあるこちらの ,(カンマ)も、何か挿入や付属されているような風合いですね😅

先の such that節のように、主語と述語動詞は内部に見つけられませんが、
「あ、which… 関係代名詞?」と思っていただけると素晴らしいです👍

ただ、今回は whichの前に ,(カンマ)があり見慣れないですね。
先行詞と思われるものも、直前に見当たりません。

,(カンマ)で挟まれたり導かれている部分は、「メインではないけど一応伝えておきたい挿入部」であることを、👆で知りました。
今回も、たしかに関係代名詞ではあるのですが、,(カンマ)に続いて使われる「関係代名詞の継続用法」といわれるものです。

まず、先行詞に続いて which や who また that が置かれる、いつもの関係代名詞は「限定用法」と呼ばれます。
例えば、

は「(リズミックキューイングを受けた)▶︎ 患者さんは よりスムーズに歩くことができた」と、
様々にいる患者さん(patients)の中で

という意味合いで、まさに「限定」しています。

一方、継続用法である

では、

と、サブ情報を付け足すような意味になります。

本文に戻ると、

という構造で、

継続用法と言えども関係代名詞なら先行詞があるはずです。
such that 節を飛び越えて、a strong, steady beat が先行詞になりそうです。

が!

答えから申しますと、おそらく今回の文の場合、a strongm steady beat は先行詞ではありません。

訳してみたり、本文前後を読んでみると、継続用法の関係代名詞が詳しくしているのは、such that 節内の内容ではないかと思います。

まず、継続用法を踏まえて、

を訳してみると

のようになります。

もし、a strong, steady beat が先行詞だとすると、

のような訳になり、あたかも「a strong, steady beat が神経経路を通る」と意味が成立しない修飾関係になってしまいます。

むしろ、大脳基底核と異なる神経回路を経ることができるのは
, which の直前にある「発話が外的に導かれる」ことそのものではないでしょうか。

関係代名詞の限定用法は、先のように様々に考えられる patients の中でも特定の the patient を表すものでした。
一方、継続用法は、先行詞をわかりやすく修飾(詳しく)するものではなく、追加情報を後付けするもので、修飾している名詞や内容が少しぼやけることがあります。

意味や本文での前後関係を考慮すると、

という追加情報は

という関係性で、such that 節内全体の内容に、余談を付加しているのでしょう。

つまり、 such that節の前をA、以降をBとして、Bのなかで such that節に関係代名詞の継続用法が続いている構造になります。

これを、such that の解説を踏まえて訳してみると

という方針で訳せます。

最後の文を改めて整理します。

such that
似た形のもので so that があります

such + that の組み合わせでも、
❶ ~, such that – と ❷ such ~ that – で意味が異なります
so + that の組み合わせも ⑴ ~, so that – と ⑵ so ~ that – の形で意味が変わります
前後関係や訳し方に注意は必要ですが、私のように so that のほうが親しみがある場合は、本文(❶)は ⑴に似ているとおぼえてもらってよいでしょう

限定用法と継続用法
関係代名詞や関係副詞の前に ,(カンマ)があるときは継続用法とよばれ、通常の限定用法よりは “縛り” の弱い情報を付加するようなときに用いられます

語彙や文法の内容が盛りだくさんの本文でしたが、以上をまとめるとこのような訳例が考えられます。